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クリスマスイブのイブのこと③

僕は、多分こんな日が続いていくんだろうなって思ってた。ハルは2人でお花見に行って、夏は2人でベランダでアイスを食べて、秋は栗拾いに行って、冬は2人でコタツに入って、そんな風に一年が過ぎた。出会った頃、僕は高校生でハルは大学生。付き合った頃、僕は専門一年、ハルは社会人一年目。それから一年が経った。そんな頃、僕らに別れは来た。ハルの転勤話がきっかけだった。寒い冬だった。

転勤先が日本ならまだしも、ハルの転勤先は海外だった。簡単には会いには行けない場所だった。聞いた時、僕は「そっか」としか言えなかった。ハルは俯いたまま何も言わなくて、その日は別れた。僕は考えた。僕は20歳、ハルは24歳で、僕はハルから社会人になる。でもハルのようにきちんとした企業に入るわけではなく、フリーランスで働くと決めた矢先だった。収入も安定しないし、連絡もろくに取れなくなる。ハルが海外にいるなら尚更だった。海外という新たな土地でこれから飛躍していくハルの足枷にはどうしてもなりたくなかった。僕が自分で言うのもなんだけど、ハルは僕のことが大好きだった。ハルは僕のために、多分日本によく帰ってくることになると思った。それは違うだろう。ハルは海外に行くなら、そこで結果を出すまで日本に帰って来ない方がいいんだ。ハルは仕事をするのも好きだし、辛いことや苦しいことも自分で昇華できる出来た人間だった。何が書きたいのかわからなくなってきちゃったけど、なんだか1人でぐるぐる考えた結果、僕は別れた方がいいという結果を出した。ハルにその話をしたのは、考えた日から1週間くらい経ってからだった。

新宿東口で待ち合わせした僕らは、その日はどこの店にも入らずにぶらぶら新宿を歩いた。あの日とは違い、僕はすぐハルを見つけて手を繋いだ。歩きながら色んな店を見たけれど、どの店にも入らなかった。2人の好きな映画館にも入らなかった。ただひどく冷たくなった手をお互い手繰り寄せるように握ってるだけだった。どこを歩いてる時だったかな。そう、多分ビックロ辺り、で、僕が別れを切り出した。歩みは止めずに。「別れようか」と、一言だけ。そしたらハルは僕の手を解いて、立ち止まった。土曜日だったから人がたくさんいて、ハルのことを見失わないように、でも駆け寄ることもせずに僕はその場からハルをジッと見ていた。俯いてるハルが僕を見た時、僕はびっくりした。ハルは泣いてなかったから。何かしらあると泣いていたハルが、全く涙を見せずに人ごみの中でシャンと1人で立っていたから、僕は堪らなくなって、泣いてしまった。駆け寄ってきたハルは僕の手を握らずに、たださすった。まるでいつかの2人が逆転したみたいだった。それから2人で手を繋がず駅に向かい、別れた。それ以来、僕とハルが会うことはなかった。ただいつか、また会えたら、と言葉を残して、ハルは気丈に振る舞いながら改札の向こう側に消えた。初めてハルが大人に見えた瞬間だった。さよならハル、そう呟いて僕は駅構内で1人しゃがみこんで泣いた。これが僕とハルの別れ話。