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クリスマスイブのイブのこと②

どこまで書いたかな、そうだ、友達になったところだったかな。

ハルはもう就活を終わらせていたし、僕も暇を極める学生ということもあり、2人で遊ぶ時間は増えていった。共通の友達もいないので、会うときは必ず2人になる。2人とも映画が好きだったから、いつも映画を観にいっていた。ハルのリクエストで遊ぶのは必ず水曜日(映画館はレディースデイ)。映画を観て、美味しいものを食べて、終電までにはお別れ、というのを繰り返して、春になった。

相変わらず僕たちは友達という関係を保っていた。その間に僕は彼女ができたことはない。ハルとセックスなんて当然していなかった。その当時の口ぶりからして、ハルも彼氏がいるということはなかったと思う。僕の中でハルはなんとなく他の友達とは違う位置にいたし、ちょっと特別だった。何よりも優先する人、というわけでもなかったけど。ハルにとっての僕も多分そんな感じ。

春になり、社会人になったハルとは、あんまり遊ぶ時間がなくなった。当然水曜日は仕事だし、土日だってなんだかんだ忙しそうにしていたから、会えても月に一度とか、そのくらいだった。会えない日々は僕も別の友達と遊んでいたけれど、なんとなくハルと会えないのを寂しく感じてた。美味しそうに何かを食べるハル、映画を観て鼻水垂らしてるハル、酔ったら大笑いして街中をスキップするハル、何しててもハルを思い出すようになっていた。5月、気づいたら僕はハルの職場前にいた。有名な企業だったから、検索したらすぐに住所が出てきたし、いつ仕事が終わるとかもわからなかったけど、ハルが出てくるまで待てばいい話だった。連絡もしなかった、仕事の邪魔になったら嫌だったから。夜の7時くらいから待ち始めてハルが出てきたのは夜の10時くらいだった。それまでずっと外で待っていたけど、色んな人に怪しまれてちょっと居心地が悪かった。僕を見つけたハルはびっくりした顔で「どうしたの?」って駆け寄ってきた。「どうもしないよ、会いたかっただけ」と確か言ったと思う。そしたらハルが嬉しそうに笑うから僕は確かそう、恥ずかしいけど思い出したら死にそうどうしよう。ハルをその場で抱きしめた、うん。ハルに触ったのはあのホームレス事件以来だった。ハルが「なに?なに?」って焦るから僕はとにかく落ち着いた声でって意識して「付き合ってほしい、です」って言った。一応年上だったし、今更敬語かよって感じだけど、真摯に告白したかったから。ハルは鼻をすすりながら「付き合う〜付き合います〜」って泣き叫んでた。場面場面で泣いてないか?と思いながら僕はおかしくて笑ってしまった。そしたらハルも笑って、ハルの職場ビルの下で、僕たちは大笑いした。5月12日のことだった。その日が僕たちの記念日になった。

それから僕もハルはしょっちゅう会うようになった。と言っても、ハルは仕事があるから平日の夜、ハルの家で僕がご飯を作って待つ、というのが普通になっていた。過ごすのは大抵ハルの家で、僕が暇な時はご飯を作って待って、僕が忙しい時は数日会わなかったり、そんな日々を過ごしていた。

ちなみにハルは魚が好きで、特に鯖が好きだった。僕も鯖が好きだから、よく献立は鯖の味噌煮になった。ハルは料理ができない。掃除洗濯は人並みにしていたけれど、料理がからっきしできない。だから会えない時は、僕がよくハルのために作り置きをした。何日か分のおかずを冷凍して、それを食べてもらっていた。強制じゃないよ。僕がしたかったからしてただけ。ハルが食べてる時の笑顔が好きだったし、何よりも2人でご飯を食べてる時が1番幸せだった。セックスするよりも、キスをするよりも、抱きしめ合うよりも、幸せだった。僕もハルも、なんでもないそんなことが、幸せでたまらなかったんだ。